||| 乙女の秘密 |||



「エイリーク様、たいしたものじゃありませんが、受け取ってもらえますか」
そう言って差し出された手の平には、リボンを掛けた小さな箱が乗っていた。
「私に・・・ですか?」
嬉しそうに頬を染めるエイリークに、フォルデは少し恐縮したように微笑む。
「本当にたいしたものじゃありませんけどね」
彼はそう言って頭を掻いたが、好きな人にプレゼントされたものならば、何だって嬉しいに決まっている。
「ありがとうございます、フォルデ・・・」
エイリークはフォルデの手からそれを受け取ると、とても大切そうに両手で包んだ。とても小さな箱なのにとても重く感じるのは、彼の気持ちが詰まっているからだろうか。
「開けてみてもいいでしょうか?」
「どうぞ」と頷くフォルデに、エイリークがそっと包装を解くと、中から現われたのは小さな青玉のピアスだった。シンプルなデザインだが、その色合いが美しい。
「綺麗・・・」
エイリークは目を細めると、早速今つけているものを外して、つけてみる。
「似合いますか?」
エイリークが髪を耳にかけると、耳元でその瞳と同じ深い蒼色の輝石がキラリと光る。その様子にフォルデは心の中で感嘆のため息を漏らした。
何気なく通りかかった店先で、エイリークの瞳と同じ色の輝きを見つけて、どうしても素通りすることが出来なかったのだ。
思っていた通り、エイリークによく似合う。
「よくお似合いですよ」
微笑むフォルデに、エイリークは幸せそうに笑って、そっと耳元に触れた。


それから数日後、フォルデはエイリークの耳元で光る青玉の隣に、もう一つの輝石が輝いているのに気がついた。
エイリークはその視線に気が付いたのか少し頬を染めて、二つのピアスに触れる。
「あぁ、これですか?・・・どうしてもこれがつけたくて、もう一つ穴をあけてしまいました」
「他にしたいものがあるなら、別に俺の差し上げたものなんて、外してもかまわないんですよ」
何故だか嬉しそうに微笑むエイリークに、フォルデが少し困ったように言うと、途端に彼女の笑みは意味ありげになものへと変わる。
「外してしまっては意味がありません。どうしても一緒につけたかったのですから」
その意味を図りかねて不思議そうに首を傾げるフォルデに、エイリークは満足げに微笑むと、青玉の隣で輝く赤玉に触れる。
その意味は乙女だけの秘密である。



2004/12/08
2005/04/16 Renew