||| 木漏れ日の下 |||
昼下がり。
降り注ぐ日差しがぽかぽかと心地良くて、フォルデはうーんと伸びをした。
「絶好の昼寝日和だよなぁ」
彼の相棒が小耳に挟んだなら、「おまえにとっては毎日が昼寝日和だろう」と呟いただろうが、生憎と聞きとがめる者はなく、フォルデは軽い足取りでお気に入りの昼寝場所へと向かう。そこは大きな樹が広げた枝が適度に日差しを遮り、心地良い風が吹き抜ける、昼寝には絶好の場所だった。
「ん?」
フォルデはお目当ての場所が見えたところで、ふと足を止めた。
普段あまり人は来ない場所なのだが、今日は珍しく先客がいるらしい。
誰かが彼の特等席に横になっているのだ。
仕方なく他に行くのかと思えば、フォルデは逡巡した後、再び歩き出した。
近づくにつれ、占有者の姿がはっきりと見えてくる。
それは予想通りの人物で、無意識に目を細めた。
微動だにしないのは眠っているからだろうか。
フォルデは起こさないようにと歩調を緩める。
そっと隣に腰を下ろしても、エイリークはまったく気付かないのか、木漏れ日を受けて気持ち良さそうに眠っている。
幸せそうな寝顔に、思わず顔がほころぶ。
思わず手を伸ばして柔らかな髪を撫でると、長い影を落とす睫が僅かに震えた。
どうやら起こしてしまったらしい。
エイリークは眠そうに何度か瞬きをすると、フォルデの姿を捉える。
「フォルデ・・・」
「こんな所で何をなさっているんです?」
慌てて身体を起こすエイリークに、フォルデが少しからかうような口調で尋ねる。
「いつもあなたが気持ち良さそうに寝っているので、少し横になってみたのです。そうしたら何時の間にか眠ってしまいました」
少し恥ずかしそうに笑うエイリークの髪を、心地よい風が撫でていく。
「本当にここは気持ちのいいところですね」
「もちろん。俺のとっておきの場所ですから」
笑ってフォルデは寝転がった。
太陽の日差しに緑は輝き、木漏れ日がキラキラと光る。
その美しさに目を細めていると、エイリークがフォルデの顔を覗き込む。
流れ落ちた髪が木漏れ日に透けて輝く様は春の海のようだ。
目を閉じて昔見た海を思い浮かべていると、唇に柔らかなものが触れた。
フォルデが目を開けると、
「なんだか急にそうしたくなりました」
エイリークがはにかむように笑う。
フォルデが手を伸ばして頬に触れると、エイリークも自分の手をその手の上に重ねる。
見つめあっているだけで幸せで、自然と笑顔になる。
フォルデはそっとエイリークを引き寄せた。
今度は二人でキスをした。
2004/12/03
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