||| 誓 願 |||
「エイリーク」
名を呼ばれて振り向くと、すっとエフラムの手が伸びてきた。
その手がエイリークの頭を撫でる。
「あ、兄上!ですから子供扱いは止めてくださいと・・・」
「そうだったな」
珍しく表情を曇らせたエフラムに、エイリークは気遣わしげな視線を向ける。
「どうかしましたか?」
「いや・・・いつかお前にこうするのは他の奴になるんだなと思ってな。・・・珍しく感傷的になっているようだ。気にするな」
何かを振り切るように踵を返して歩き出すエフラムを引き止めるように、エイリークは後ろから抱きついた。
「兄上・・・。頭を撫でてほしいのは兄上だけです。今までも・・・これからも・・・」
「エイリーク・・・」
ずっと生まれる前から一緒だったエイリーク。
今はそう言っていても、いつかは他の男と別の道を歩むのだろう。
王となった自分も後継ぎを作るため、いずれ后を娶る事になる。
そうわかっていても。
今この時がずっと続けばいい。
エフラムは自分の身体に回されたエイリークの左手を取ると、祈るようにそっと口付ける。
「兄上・・・」
薬指に感じるエフラムの唇の感触に、エイリークはとても泣きたくなった。
2005/01/01
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