||| しあわせの音 |||
麗らかな午後の日差しの下、エイリークとフォルデは公園の芝生に並んで腰を下ろしていた。
お互い時間があるときは、こうして日溜りの下、一緒に過ごす事が多い。
特に何をする訳でもなく、ただ単に他愛もないおしゃべりに興ずる事もあれば、今日のようにフォルデが何気ない景色を写し取るのを眺めている時もある。
それはありふれた日常かもしれないけれど、エイリークはこうして一緒に過ごせる時間をとても大切に思っていた。
子供たちが目の前を楽しそうに笑いながら駆けていく。
エイリークがそれを目を細めて見送っていると、隣でスケッチブックに筆を走らせていたフォルデが盛大な欠伸をする。
思わず笑い声を漏らすエイリークに、目の端に涙を溜めたフォルデが照れ笑いを浮かべる。
「こう陽気がいいと、なんだか眠くなりませんか」
フォルデはスケッチブックを脇に置くと、ごろりと横になった。
そんなフォルデを微笑ましげに眺めていたエイリークも、つられたように小さな欠伸を漏らす。
すると地面についたエイリークの手に、フォルデの手が重ねられる。
「エイリーク様も一緒にどうですか?」
笑顔で自分の胸をトントンと指し示すフォルデに、エイリークは笑みを返す。
たまには一緒に昼寝もいいかもしれない。
エイリークはフォルデの傍らに横になると、その胸に頭を預けた。
目を閉じると、頬にとくん・・・とくん・・・とフォルデの鼓動を感じる。
とても大切な人の命を刻む音。
エイリークはつないだ手を胸元まで引き寄せると、もう片方の手をそっと重ねて、命の音に耳を傾ける。
それはとても幸せな音だと、そう思った。
<お題1 絡めた手と、ぬくもりと>
2005/01/12
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